昔の鉄道の話題から

【横浜貿易新報の記事より】

(2) 枕木で森林破壊!!





   明治42年10月9日    横浜貿易新報 

                            森林荒廃の恐怖

                           =鉄道枕木の影響=

鉄道院は本年より枕木購買に関して従来仲買人等の手を経てこれを経る事を廃して、山本製材人より買上げの契約をする事に改めたる。(中略)

鉄道当局者の調査に依れば、米国の如きは今より五十年前迄は殆ど世界一の大森林国を以て称せられたるに拘らず、最近三十年間に於ける鉄道の発達は夥しき“枕木”を要求し、年々伐採し去る用材の数量は他の用材に比して驚くべき最高に達し、これに次ぐものは新聞紙に使用する原料用材にして鉄道枕木と相俟って伐採に忙しく、今後二十年にして全森林を伐採し尽くすべしとの統計を示して之が救済を叫ぶものあるに至りたり。

而して我国に在りては現に富士製紙会社が北海道江別にその工場を分設して、大規模の製紙に着手したるのみにて其の他製紙方面より森林を荒廃すべしと認めらるる底の状態は未だ至らずと雖も、鉄道枕木に至りては既に本島東北の海辺及び鉄道沿線に近き森林を伐りつくして漸く河川其の他運搬に多少の便利ある地域に入り今や其れをも将に伐りつくして深山幽谷の奥に移らんとするの時期に進めり。

勿論北海道には未だ本島の如く甚だしきものあるに至らざるも、之亦将来十年を出ずして殆ど同一の惨状に達すべきは暁かなる事実なり故に此の際採るべきの方策はその最も多く消費すべき鉄道枕木並びに用紙原料を出来うる限り節減して、一方に於いて植樹培養の方法を講ぜしむにあるべし。

即ち枕木に在りては従来の木材にて防腐剤を施して、現に七・八年の保存に耐えるものを十四・五年間の耐久力を保たしむるの策を講ずるか、、若しくはコンクリートないしは鋼鉄等の類を混用して比較的木材の消費を制限するの方法に出づるに在りと為し、現に米国に於けるそれらの研究と相対して目下頻りに研究の歩を進めつつありと。



廃物となった枕木を利用した
線路脇の柵

日本の歴史を見つめ続けて来た風格が
滲み出てきている様に見えます。
          明治時代の環境破壊

明治42年当時の日本鉄道事情は大規模な国有化が行われて間が無い時で、現在の幹線と言われる路線はほぼ開通していました。

その延長距離は約1万Kmにも達していました。明治5年に新橋〜横浜間に鉄道が開通してから、もの凄い勢いで鉄道が延びて行ったかが判ります。平均しても年に200〜300Kmの鉄道が開通していった事になります。

これだけの鉄道にどの位の枕木が使われていたのでしょうか?
単純に計算してみましょう。
まず枕木一本の長さは2mとし、枕木の間隔は1mとして計算すると、本数で1000万本となり、枕木の総延長は2000万m(2000Km)となり、10mの高さの木なんと200万本という計算になりました。

この数値を見ただけでいかに多くの森林が伐採されたかが想像され、新聞記事の内容(全森林を伐採し尽くすべし)が必ずしも誇大表示ではない事が判ります。
           枕木の寿命

枕木はクリ・ヒバ・カラマツ・ニレ・モチ・ナラなどの木材が使用されていましたが、クリ以外は腐蝕するので耐用年数が短く、明治の頃よりクレオソートの注入が行われてきたそうです。
その様に防腐剤処理をしても7〜15年だそうです。
(その為、余計に木材の需要が高かったのですね!)

その為、現在は上記の記事に書かれている様にコンクリート製の枕木(PC枕木)が主流になっているようです。(夢が実現したわけですね)

【この部分京急建設鰍フHP(保線屋のよもやまばなし)を参照させていただきました。ありがとうございました。】


枕木のある風景
(実に人間臭さ・暖かさが感じらますね!!)


犬釘で固定されている線路
(JR高島貨物線にて)
枕木を検索すると→ガーデニング!?
インターネット検索で”枕木”と入力すると、検索される項目はその殆どがガーデニング関係のものばかりです。本来の鉄道の枕木についての項目は殆どないのです。

今や役目の終わった枕木は廃物利用先としてガーデニングの土留めや歩道になって使われ、第二の人生を送っているようです。

まさしく枕木は日本鉄道の”縁の下の力持ち”と云った地味ではあるが、無くてはならない役割を背負っているのですね。

たまには駅のホームから線路を見て”枕木さん”に感謝しましょう!!

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