「横浜貿易新報」に見る横浜関連鉄道記事ファイル
国鉄編(3)

〔明治43年〜明治44年〕

【注】 
→記事見出し ・  →ハマちゃんの感想

年号                           国有鉄道
明治 43 1 7 鉄道改良の方針  古川中部管理局長談

▲京浜敷地買収
京浜間増線の計画に対する敷地の買収は既に開始し鶴見・川崎両停車場の如き其の工事に着手せり、買収敷地は沿線は僅少なるも停車場拡張工事に要するもの六十七万坪以上に達すべく本工事は明年度より開始の予定なり。
▲山の手線電車改良
山の手線電車の不完全なる事は当局に於いても認め居るところにして、殊に近来事故多き原因はドイツのシーメンス・ハルスク会社より買入れた車両が不完全なる為にして蒸気機関車の併用も又其一原因なるべく早晩横浜日光間其の他の直通列車をも追々電車に改むる方針なり。
 【横浜貿易新報の記事より】

(京浜線複々線の工事完成後は電車運転が行われる方針が始めて示されている)
明治 43 1 13 京浜電車併用

鉄道院にては比較的乗客の数多き線路は成るべく電車併用運転となす方針にて、既に東京山の手線の開始を告げたる今日更に東京横浜間にも実行せんとて目下調査中なるが現今の線路のみにてば到底不可能なるを以って、明年度より着手せられべき増線工事完成の上実施する事にほぼ決したりと云う。
なお横浜日光間上野桐生足利間等にもこの計画あり。
 【横浜貿易新報の記事より】

(京浜線の電車運転が決まった事が書かれている)
明治 43 1 29 京浜複々線進捗 =目下土地買収着手=

鉄道院にて京浜間の複々線を計画せること既報の如くなるが二線は急行列車用とし残部二線は区間旅客列車及び貨物列車用とする事とし愈々実行に決し昨今土地買収に着手したる。来る三月末日までには土地全部の買収を決行し四十三年度初めより一部土工に着手する筈にて。其の費用一千万円の巨額を要する事とて、今後の予算の関係上竣工期は未だ明らかならざるも多分三四年間を要すべしと当局者は語れり。
 【横浜貿易新報の記事より】

(京浜線複々線の使用区分として一つは急行列車専用となっている。貨物は区間旅客列車と一緒の線となっている。なかなかどの様に使用するのか決定しなかったようだ!!)
明治 43 3 23 京浜間十八分 ▲一分間一里の列車

現在東京横浜間の列車走行は最大急行と雖も尚二十八分間を要し、今後交通の頻繁に副ふべくもあらず去れば鉄道院にては更に之が短縮運転方法に就き諸般の調査を遂げたるも、何分現在の狭軌式軌道にてはヨリ以上の短縮到底不可能なるを以って、もっか計画中なる所謂複々線増設軌道を特に広軌軌道として京浜間十八哩を十八分にて到達せしむる事とせんとの議あり、昨今之が調査を進めつつありと。
 【横浜貿易新報の記事より】

(複々線の一線を広軌化して東京〜横浜間を十八分結ぶ計画があったとは、実現していれば現在の新幹線(東京〜新横浜間)十五分とほぼ同じであった。90年以上前にこの様な計画を持った明治人にカンパイ!!)
明治 43 4 14 新橋・程ヶ谷間工事

四十三年度鉄道院改良費は二千万円中に於いて、予て計画中なる新橋程ヶ谷間現在の複線の外更に2線を敷設する事に決し、その工事は大凡三ヵ年間の継続事業とし、本年度に於いては先ず用地の買収を行い幾分の工事に着手すべき予定なるが、沿線京浜間の将来地価益々昇騰すべきを以って各地主は何れも予定価格を以って買収に応ずる事を拒むべし。その結果は土地収用法を適用すべき箇所も生ずるべく、従って用地の買収には多数の日時を要し、本年度中に於いて全部結了に至ざるべく四十五年度中に全部完成せしむ事は或は困難なるべきか。
 【横浜貿易新報の記事より】

(この時点でも3複線化の計画だったのか?)
明治 43 5 4 官鉄広軌問題

東京横浜間複々線問題は愈々四十三年度より起工準備に取り掛かる事に決定したるが、敷地実測及び用地買収に當りて端なくも広軌問題起こりたる結果、後藤鉄道院総裁は単に京浜間の広軌敷設のみならず全線改築の利害及び狭軌鉄道の最高輸送力等を一括して業務調査会に調査を命じたり。(中略)京浜間の敷地及び六郷川橋梁は広軌鉄道敷設の方針を以って設計を為す事に決定せりと云う。
 【横浜貿易新報の記事より】

(後藤新平鉄道院総裁が大風呂敷の本領を発揮し日本の鉄道を広軌化する様命じている)
明治 43 5 25 海陸連絡工事 -竣工試運転は六月中旬-

横浜税関清埋立地と横浜駅との間に工事の海陸連絡線は昨今横浜電車との交差点工事出来上がるも、構内に於ける軌道固めの工事未だ完成せざるが為に全部の竣工試運転をみるは早くも六月十日後なるべしと云う。
 【横浜貿易新報の記事より】

(今の汽車道を通って新港埠頭に通じる鉄道が開通目前!!)
明治 43 5 25 区間列車の改善

中部鉄道管理局にては在来装置せる東海道線急行列車以外今回新たに国府津新橋間、新橋横須賀間、横浜新橋間に運転する各列車全部に電燈設備を施す事になり如上区間を運転する三十列車の中、既に十列車は其の取付けを終わりたるが同時に車両をも漸と逐ふて新式ボギー車のみを連絡編成する筈。
 【横浜貿易新報の記事より】

(普通列車に始めて車内に電燈が付けられたとの事!!)
明治 43 6 12 横浜停車場問題

横浜停車場移転に関する鉄道院の意見未だ具体的に決定せざるも、過般記載せる如く西戸部天神山附近に移し、現在駅を貨物駅とする方針にて目下測量を進捗しつつあるものの如くなるが、之に対し横浜側の希望は先に経済協会に於いて天神山移転には強いて反対せざるも現在駅を貨物駅とするの外、京浜間乗客専用とするの意見を定めて当局に交渉する所ありしも、未だ尚院意見を動かすに至らずる由にて、九日の常務理事一部の集会中にもこの問題を協議に附する所ありしが、元来京浜間の交通を拡充するの意は、要するに東京と関内との商工機関の連絡を接近せんとするに外ならざられば、現在に於いてすら外人の如きは急行列車の一日三回を四回に増加されんを望み居る程なるに、将来停車場を更に十数町の遠きに移す時は、急行を一回増したりとてこの重大なる不便を償うに足らざるに依り、協会理事は若し現在駅を拡張して京浜乗客専用とするを得ずとせば、その代り現在軌道に直通電車線を併用する事山手線に於けるが如くせん事を希望するに在りとなり。
 【横浜貿易新報の記事より】

(旧横浜駅も、旧新橋駅の様が汐留貨物駅になった様に貨物駅になる危機があったのですね!!)
明治 43 6 18 広軌線と横浜駅

鉄道院にては愈々本年度改良費の一部を以って新橋横浜間に新たに一往復の広軌線路を敷設する事に決し、既に土地の買収に着手し鶴見停車場附近及び六郷川附近の土地買収を完了し、難工事たる六郷川鉄橋工事は現在の鉄橋の下流に架設する事となり此の程入札に附する迄に至りたるが、同工事と共に起こるべき問題は横浜停車場の拡張にして、古川中部管理局長は此の際附近に散在せる神奈川・平沼の両停車場を廃止して、現在の横浜駅と平沼駅との中間に位せる地点を朴して一大停車場を新設し、現在の横浜停車場は専ら貨物停車場として只新橋横浜間に来往する一部旅客のみの乗降場とし、その他の旅客は新停車場に発着せしむる方針にて、鶴見以西の広軌鉄道線路敷地は未定の儘本院に提出したるが、一方この計画に反対して現停車場を拡張せんとする説出て、現在の神奈川・平沼・横浜の三停車場を存置し、平沼駅の一部を拡張して従前通り急直行列車のみを平沼駅通過とし、区間列車は横浜通過とせんと主唱しつつあれば、新橋・横浜間広軌軌道線路の決定を見るまでには尚幾多の日数を要すべしと伝う。
 【横浜貿易新報の記事より】

(旧横浜駅と平沼駅を拡張して、問題を解決させる事を主張する説もあり、問題解決に時間がかかる由!!)
明治 43 6 26 大船横須賀間 ▲鉄道院の電車計画

鉄道院にては大船・横須賀間の軌道を複線に改め汽車に換えるに電車を以ってせんとの計画あり、既に沿線の測量終了したれば早晩土地買収に取り掛かるべしと伝う。
 【横浜貿易新報の記事より】

(ここで横須賀線の複線・電化の計画が出て来る)
明治 43 6 26 海陸連絡開始期

税関新埋立上屋より突堤と橋梁とを経て電車線を横断し、横浜駅構内に通ずる海陸連絡線の工事は去る十五日頃全部竣成し、目下線路を固める為土工車を運転し居れるが、斯く工事上の手続き終了するも税関と鉄道院との貨物取扱いに関する諸般の手続き未だ決定せざるが為、上屋と駅との貨車運転の開始を見るに至らざる次第なるが、しかし是も本月中には終了する筈なれば、遅くも来月上旬より日に一回位の往来を試みる事となるべく引き続き各船主荷主が連絡線の利益を威得して、繋船岸を利用するの日は貨車の往復追々頻繁となるに至れば、電車交差点の合図員配備に就き院と会社との交渉も起こるべしと云う。
 【横浜貿易新報の記事より】

(電車線を横断とあるのは横浜電鉄〔路面電車〕の事と思われます)
明治 43 7 23 東海道線改築 ▲新線路敷設と公債

鉄道院は現在の東海道線は早晩一大改築を要するの時期到来すべくしかも之が実行の場合は同線は昼間は主として旅客列車を、夜間貨物列車を運転し成れば四六時中該線路は殆ど寸時も休む暇なきを以って、前記大改築を行うとせば、当然更に増線の上にて之に着手せざるべからざる次第なるが、同院にてはこの機に於いて現在線路の外、更に新路線を旅客・旧線路を貨物専用線として以って大幹線の運輸を完備せしむる筈にて其の経費は公債を募集し之に充てん計画の由にて、同時に新線路は広軌となすべしとの議あるも、右は充分なる調査の上ならでは決定し難く目下鋭意諸般調査中なりと。
 【横浜貿易新報の記事より】

(新路線は旅客線で広軌との構想!!)
明治 43 7 26 京浜広軌決定

鉄道院は京浜間の増線軌道は広軌式を採用する事に決し、全部電車に依り旅客のみを取り扱う事に内定せる由なるが、従来京浜間は急行列車にて二十八分を要せしもが該計画実行の上は更に之を短縮し得べしと。
 【横浜貿易新報の記事より】
明治 43 7 28 京浜と官鉄電車

横浜停車場の位置に就いては其の筋に於いて内定する所ある由なるも、未だ発表の時機にあらずとなし具体的説明を為さざるも、新橋・横浜間に二両乃至三両連結の電気鉄道を運転せしめ、京浜間旅客の便を図り蒸気列車は同所を通過せざる方針なるが、現在横浜より横須賀・国府津方面に来往せし旅客に対しては、今後湘南地方に電車を延長する迄は別に神奈川若しくは平沼に達する電車を運転せしめ、その接続を図る考えなり、而して京浜間を来往する旅客は現在の蒸気車に比し回数増加する次第なれば、一層の利便となり湘南地方に赴く者は一時乗換えの不便あるも、遠からず電車延長を見てこれまた非常の便利となるべし云々と当局者は語れり。
 【横浜貿易新報の記事より】

(横浜より横須賀・国府津方面に行く蒸気車は神奈川若しくは平沼始発になると言う事なのでしょうか?)
明治 43 8 6 市郡の鉄道測量

鉄道事業計画の為横浜市及び久良岐・鎌倉郡内の町村に立入り測量或は検査をなすべき旨、此の程内閣総理大臣より神奈川県庁へ通達ありたりその町村左の如し。
▲ 横浜市の部 
  港町・尾上町・住吉町・桜木町・花咲町・福島町・野毛町・福富町・宮川町・長者町・末吉町・日之出町・若葉町・初音町・黄金町・南吉田町・三春町・長島町・吉岡町・南太田町
▲ 久良岐郡
  大岡川村・日下村
▲ 鎌倉郡
  本郷村・豊田村・小坂村
 【横浜貿易新報の記事より】

(突然鉄道事業計画の測量の通達の発表があるのです。その町村名を見ると丁度、明治3年に佐藤政養が東西両京を結ぶ幹線の線路選定を行い、明治4年1月に調査結果を復命している[東海道筋鉄道巡覧書]に記載されているルートにほぼ同じではないでしょうか!!これが後日問題になる大船延長線の事であると思われます。)
明治 43 9 8 京浜増線は狭軌

東京横浜間の増線工事は目下敷地買収中にて、本年度内には一部起工の運びに至るべきが、同線は当初広軌式となし電車のみを運転する計画なりしも、該計画を実行するに於いては山手線電車との連絡を欠くのみならず、将来中央停車場開通の暁は京浜線も亦同停車場迄延長せざる可からず、しかも高架線には広軌を布設するの余地なき等の事情より自然京浜線も山手線等と同じ狭軌に依る事となれりと。
 【横浜貿易新報の記事より】

(広軌で決定したと思ったら何と狭軌に変更してしまった。このあたりは政治的・経済事情的な動きが大きかったのではないかと想像されます。)
明治 43 9 23 京浜広軌は未決定 ▲岸工務課長談

東京横浜間増線工事は広軌採用に決定せる如く伝えらるるも、右は本院は元より管理局に於いても議論一致せず、総裁の意向も未だ確定せざる模様なり、若し広軌を採用する事とせば市内現在の高架は広軌を敷設するの計画となり居らざれば、更に用地を買収して高架線を取拡げざる可からず、右は実際に於いて到底不可能の事に属するを以って、第一之が経費財源を求むる等の幾多至難の事情に逢着すべく、従って未だ両論何れとも決定せず、然れども京浜間のみは遠き未来を予想して用地だけは広軌に差換えを生ぜざる程度に於いて買収中なるが、如上広軌決定説の出所も恐らく此の辺より出たるものなるべく、いずれにしても京浜間既定の増線工事は明春線路敷設の予定なれば、本年度内には両論何れかに決定すべきも市内高架線のみは異議だもなし云々。
 【横浜貿易新報の記事より】

(広軌問題は結局財政難により実現出来なかったのではないかと書かれています)
明治 43 10 6 横浜停車場問題解決  鉄道院と経済協会の協定

久しく横浜経済協会の懸案たりし横浜停車場拡張改良に伴う移転問題は、幹事常務理事の協議を重ねる事前後十数回に渉り、四日の夜も五時より九時まで五日も午後一時より三時迄連続協議する所あり。特に五日は解決の機に近づきつつある事と、鉄道院より古川中部管局長出張臨席し周布名誉会員、荒川新理事長を始め幹事常務理事殆ど全部社交クラブに出席し、結局横浜側の提案が大部分院の納るる所なり、現在駅を貨物専用及び京浜間電車とする等の件も、平沼・神奈川両駅存廃の件も悉く協定されたる由なるも、その内容は明七日午後一時より社交クラブにに開く理事会に於いて発表さるべく三時より去らに総会を開いて該問題の大円談を告ぐる筈なりと言う。
 【横浜貿易新報の記事より】

(新横浜停車場の問題は市当局との話し合いではなくて、市の経済協会という民間団体が交渉している事に注目したいです)
明治 43 10 8 横浜改造の先駆  鉄道問題解決

(前略)先ず横浜市が如今諸般都市的設備の計画を有するに際し、繋船壁と共に本市の一中心点を為すべき中央停車場の設定、速やかに決したるは他の諸計画に対し、その準拠する所を示す所以たる事を喜ぶと同時に、尚新停車場の位置が横浜の中心市場たる関内を距る事甚だ遠からずして、而して良く東海道幹線に接触する事を得るのみならず、別に京浜間電車軌道の新設をも見、且つその発車点は依然として現横浜駅に存置せらるべしと謂うに至っては横浜市全体としては、殆ど極度の便宜を獲得したるものと認めざる可からず。
(中略)又吾人の洩れ聞く所に依れば、現横浜駅に達すべき京浜電車は、他日高架式に依りて市内を貫通し、南太田を経て大船まで延長せれるべき計画なりと謂えば、中央停車場には聊か遠ざかれる市内南太田・南吉田・中村・根岸等の各町も、将来著しく其の利便を加え、以って土地の面目を一新すべきや。今回解決せられたる横浜停車場移転改良及び之に伴う線路変更の件は、之を横浜全体の上より観察するも、又横浜局部の上より観察するも、共に最も満足すべきものたる事を首背せざる可からず、思うに横浜市民が如何なる運動を試み、又政府が如何なる好意を表すとも、これ以上の設計は到底之を期待する事、能はざるべき也。(後略)
 【横浜貿易新報の記事(社説)より】

(この時点で京浜電車が桜木町駅から高架式で大船迄延長される事の情報が初めて記載されている。)
明治 43 10 8 停車場決定報告会
 
(前略)斉藤理事は簡単に決定までの経過を左の如く報告せり。
政府が当停車場を改良拡張する為この地点を他に選定しつつある事は、諸君も間接に諒とせる所ならんが之を決定するに就き政府は好意上当協会に内示するするの手続きを取れり。
第一決定案
天神山を中心として移転せんとするにありしが、協会役員等は該地が市の中心点に遠ざかり居るを以って、尚別地点の考査を要請せり。
第二決定案
現在の神奈川駅を拡張して充用せんとするの決定を興えんとせり、之に対しても協会役員は現駅より約二哩を距つる神奈川駅を横浜駅とするが如きは天神山よりも一層商業中心に遠ざかり不便この上なければ再び銓衝あらん事を望みし。
第三決定案
高島町二三丁目及び材木町魚油会社を中心とせる地点を決定するに至れり。而して政府がこの地を選定するには、協会役員の提供せる意見を参酌し、技術上出来得る丈け引込線にならざる限り中央市街に近づかしめんとの意志を以って、此処に決定せるものなれば最早この上の変更は断じて為さざる旨をも添えて内示されたるにあり云々。(中略)
その説く所を総合すれば、新駅の位置は魚油会社と船渠会社倉庫部との中間に於いて、一方海面までを含みたる三角形の地点約一万坪を構内に取組み、プラットホームは電車にて神奈川横浜両方面より入るに都合よく設けられる筈なり。
横浜電鉄線は内田町八丁目の辺に於いて交差する筈なれば、新線は四丁目以南を高架とし横浜現在駅内は勿論、更に是より市内を縦貫して大船まで新線を布設し、其の内横浜市街通過の部分は全部高架とする筈なり。又貨物専用線も横浜市埋立地点辺より程ヶ谷本線に合する附近まで高架とし、電車を其の下より通過せしむる事なり。(中略)移転と同時に横浜駅が東海道線中に直接的に編入せらるる結果、現在の引込線は全然廃止さるべく神奈川より新駅を経て電燈会社の一部を横断して程ヶ谷手前に於いて本線に連絡する筈にて、場合に依り現在の平沼線(駅其の物は廃止さるべきも、線路は依然存続)にも入るを得べき予定なり。(中略)貨物線は複線とし現在海陸連絡線(若しくは現在構内貨車転換緒線)より船渠前を内田町八丁目まで、やや本線に並行せしめそれより高島氏及び市の埋立地附近に於いて、八王子線・東海線及び東北線等に分配すべき各種の貨車を編成すべき所、所謂中央貨車駅の実を挙ぐる筈。(中略)前記新停車場貨物専用線を始めとし、埋立地等の土工は四十四年度より着手し、四十五年度に全部の竣工を見るならんと伝えらる。
 【横浜貿易新報の記事より】

(ここにはっきりと市内を縦断して大船までの新線が作られる事が記載されている!!)
明治 43 11 18 京浜広狭五線

東京横浜間は現在狭軌複線の外目下工事中の広軌二線(敷設軌条は狭軌なるも用地は広軌の規模)を敷設せらるる筈にて、今回葉発表せられたる東京下関間広軌増線起工の場合は、当然目下工事中の広軌二戦の中一線は遠く関西に引延ばさるべしなど説くものあるも、目下工事中の複線は単に電車のみを運転せしむるものなれば、全然今回発表されたる広軌計画とは関係なく従って東京下関間広軌竣成の上は京浜間は広軌五線となる次第なりと某鉄道院当局は云えり。
 【横浜貿易新報の記事(社説)より】

(増線用地は広軌幅で買収されていたようです)
明治 43 12 18 鉄道運輸の停滞 ▲営業者の苦情

近来鉄道貨物の停滞と貨車配給の不平等は其極に達せりとの非難頻頻たる而己ならず。(中略)横浜駅堆積貨物のみにても約二千三百噸に上り神奈川駅また千五百噸を算すると聞きては勢い当局者の貨車運用法に甚だ切なる者ありと云わざる可らず。(中略)今横浜駅に於ける貨物堆積の実情を調べ一方荷主側の苦痛を察して一言当局者の反省を促さんとす。
 【横浜貿易新報の記事(社説)より】

(鉄道貨物の停滞がひどく貨物の処理能力が限界に達していた事がみてとれます)
明治 44 1 18 京浜距離短縮

現在の東京横浜間軌條勾配は最急百分の一にして、為に列車の最大短縮時間は現在の処三十二分間なるも、目下増線中の工事は全部之を二百分の一に改め、運転時間を短縮せしむる筈なれば、該工事完成の上は狭軌にても約七分間を短縮し、即ち二十五分間にて横浜に到達し得べく、之を広軌となさば尚更に短縮するを得べしと。
 【横浜貿易新報の記事(社説)より】

(軌條勾配とは何でしょうか?勾配の事なのでしょうか、京浜間では殆ど勾配はないと思われますが疑問です?)
明治 44 6 15 京浜間複線工事

京浜間複々線敷設工事の状況を聞くに敷地の買収は程ヶ谷鶴見附近の一部を余すのみにて全線の八分通りは既に結了し、(中略)線路敷設工事は大井鶴見間にして右の内川崎鶴見間は本年度中に完成の見込みなるが、沿線各停車場の改築工事は川崎駅の本月竣成せる外、鶴見蒲田の両駅は本年中に完成し大森駅は来年五月中に竣工すべしと云う。
 【横浜貿易新報の記事(社説)より】

(東海道線複々線工事が順調に進んでいる様子が伺える)
明治 44 4 3 横浜停車場より観察せる膨張量  (高辻駅長談)

(前略)「言う迄もなく横浜停車場は創始以来年々発達して居る。現に旅客線では掘割を延長し、二番線三番線を殖やし、新設程ヶ谷線を京浜旅客線として使用する事となったが尚不足を告げて居る。(中略)横浜停車場が横浜市の発展に伴って来たか何うかと質問されたならば遺憾ながら其発展に伴はないと答えなければならぬ。それは敢えて一方に平沼停車場が出来て東海道の直行急行旅客は悉く其方へ吸収されるし、(中略)然るに今回俄かに新停車場が石崎橋附近に新設されて横浜停車場が移転する事になったので其計画も今は全く空しくなった。併し是迄に充分横浜停車場が改良されていたならば或はヨリ以上旅客物資を吸収する事が出来て居たかも知れぬ。海陸連絡に就いて思い出したが連絡工事の大部分は今や完成しているのに、横浜市は之を利用する点に於いて冷淡に見受けられるのは甚だ遺憾とする所である。(後略)
 【横浜貿易新報の記事(社説)より】

(駅長が程ヶ谷線と言っているが大船ではなかったのか疑問である?)
明治 44 11 29 電車併用区域拡張

鉄道院にては横浜・国府津間及び横須賀線に電車の併用をなさん計画にて、夫々調査中なるが多分新橋・横浜間の電車併用開始と前後して実行さるべしと。
 【横浜貿易新報の記事より】

(横須賀線の電化計画がここの時点ででてきている)
明治 44 12 26 京浜増線工事

東京横浜間の改良増線工事は総額六百万円にして、本年度より起工せるものなるが既に何れも用地の買収を終り、各停車場構内の線路変更工事を行い居れるが、明年度に於いては二百五十万円を支出して、引き続き之をなす筈にて同年度中には全部線路の敷設を終り、停車場拡張工事の大部分を終わる予定にて、四十六年度中には全部完成の事となるべく同工事は全部広軌の規模とせらるる筈なりと。
 【横浜貿易新報の記事より】

(明治46年度には複々線工事完成の予定で広軌との事!!)

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