JR福知山線脱線事故と京浜急行!!

JR西日本と京浜急行と何の関係があるんだい?!
そうですね、何の関係もありませんね!!
しかし軌間(ゲージ)の違いから面白い事が浮かび上がってきますよ!!

軌間(ゲージ)と車両サイズ
みなさんも知っての通りJR(旧国鉄)の軌間は明治の鉄道開業以来1067mmの狭軌と呼ばれる鉄道で、片や京浜急行は1435mmの標準軌と呼ばれている鉄道です。
何と車輪と車輪の間がJRと京浜急行では約40cmも異なっているのです(40cmと言うとだいたい大人一人の肩幅位になりますね)。率で云うとJRの方がなんと約26%も狭い車輪幅の電車なのです。

【左写真】
(京急・金沢八景駅〜東急車輛工場への引込線)
標準軌と狭軌の線路が併設されているめずらしい三本線路の軌道です。これだけの幅の違いがあるのです!!
〔東急車輛が製造した車両をJR横須賀線逗子駅に回送する為に京急線の線路に狭軌の線路が布設されている〕
横浜駅などで双方の電車が並んで停車している所などを見ていると、線路幅の広い京急の電車の方が小さく感じる事はありませんか?(これは私だけかな??)
また普段我々が電車に乗っている時に、この線路幅の違いを感じる事はありますか?多分ないのではないでしょうか。逆に云えばそれだけJRの電車は無理をして大きな車体を乗せて走っている事になるのです。


【右写真】
京急新1000系電車(青電)とJR東日本209系電車(京浜東北線)
車体幅は2800mmで同じなのですが車体全長と車体高の違いが京急電車を小さく感じされるのでしょうか?
今回事故を起こしたJR西日本と京浜急行の電車サイズの比較
JR西日本福知山線の207系電車ですが、まず軌間は当然1067mmです。そして電車の車体幅は2950mmあるのです。なんと線路幅に対する比率は約3倍近くにもなっているのです!!

それに対して京浜急行の代表的な新1000系電車を見てみると、軌間が1435mmに対して車体幅は2800mmと線路幅に対する比率は約2倍以内になっています。絵を見ていただいてもお分かりの様に、軌間が約40cmも狭いJRの電車方が逆に15cmも幅の広い電車を走らせていたのです。

更に車体の高さも若干3cmではありますがJRの電車の方がノッポなのです。又一両の電車の長さも京浜急行の電車は18mなのに対してJRの電車が20mと2m長い車両を走らせているのです。これらの数値の差は果たして高速運転する電車の安定走行に影響はないのでしょうか?
(鉄道車両データ集)を参照

直線上を走っている分には差ほど問題になる事はないのかも知れませんが、鉄道の一番の弱点になる曲線(カーブ)ではやはり大きな影響が出て来ることでしょう。

カーブを通過する時に遠心力で外側に脱線しない様に外側のレールを高くして脱線を防ぐ為に設けられている「カント」と呼ばれている数値が、狭軌鉄道では最大値で105mmであるのに対して標準軌鉄道では150mmとなっている事によっても、狭軌鉄道が高速でカーブを走行する事を苦手としている事が解ります。

(数値が大きいほど高速でもカーブを通過できる事になります。ちなみに新幹線は200mmだそうです)

  (注)「カント」値は褐カ冬舎刊 〔どんな線路?なぜ生まれた?日本鉄道地図〕を参照

これらの点からもカーブの多い京浜急行の高速運転が、標準軌のお陰でそれ程無理をしなくても安全に運行されている事が証明されますね。(少々揺れが大きい事もありますが、京急の乗客はこの位揺れる方が好きであり、また安心しているのです?!)
なぜ狭軌で標準軌並以上の車両なの??


明治43年12月4日  横浜貿易新報
明治の終頃から大正時代かけて、大風呂敷で有名な後藤新平鉄道院総裁のもと先見的な広軌化(標準軌間)する方針が決定するのですが、長期的展望を持たない政治家と国民(現在も変わっていませんね)によってついに実現を見ることはありませんでした。

上記の新聞記事に記載されている様に、この当時既に国土の骨格になる幹線鉄道はほぼ完成していた時代であったのですが、「我田引水」的なローカル線建設を優先させる政治家(政友会内閣)により、後藤新平の掲げた幹線鉄道を改良し、広軌化(標準軌間)すると言う主張が結局実現されずに放棄されました。


しかし鉄道省内では広軌化の可能性を捨てきれず、大正10年に車両規格を国際標準軌間に近い車両建築限界を定めた。その為狭軌鉄道車両であるにも関わらず、広軌化(標準軌間)を前提にした車両が出来上がったのでした。
 (注)この部分 原田勝正著「日本の国鉄」岩波書店刊  参照

実際に広軌化されていれば現在の日本の鉄道も異なった状態になっていたのではないでしょうか?
又今回の福知山線脱線事故も回避されていた可能性もあったかもしれません。

【追記】
今でも疑問に思うのはなぜ大師電気鉄道(現京浜急行)が日本で始めて標準軌間(1435mm)を採用したのか?
その理由を知っている方がおりましたら是非教えてください!!
【おまけ】  地形図に軌間数値が記載されていた!!
国土地理院発行の1/2.5万地形図には国鉄の軌道幅を標準軌道として、それ以外の軌道幅の鉄道について軌間数値が地形図上に記載されていました。(皆さんご存知でしたか?)

下記の文章は図面の約束事を書いた昭和61年1/2.5万地形図図式と呼ばれる規則書です。

平成14年に図式が変更になり、それまで記載されていたのが新図式から軌間数値は記載されない事になりました。
鉄道を愛する私は軌道幅に関する情報が、地図上から無くなって非常に残念です。


〔昭和61年1/2.5万地形図図式:日本地図センター発行 地形図図式画報より〕


1/2.5万地形図「浦和」平成14年部分修正
【昭和61年1/2.5万地形図図式で作成した図面】

新幹線の名称の下に(1.44)と
軌間数値が書かれていますね。


1/2.5万地形図「浦和」平成15年更新
【平成14年1/2.5万地形図図式を使用した最初の図面】

新幹線の名称の下からは
軌間数値が書かれていません。


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