脊髄空洞症とは
       【JK大学 脳神経外科学講座】より転載させて頂きました。

■病因・病態

脊髄空洞症とは脊髄の中に水が溜まり、脊髄が「ちくわ」のような形になってしまう病気です。この病気の多くは、後頭部の奥にある小脳が生まれつき脊髄の方へ下に落ち込んでいる(キアリー奇形といいます)ことが原因で起こります。他には脊髄損傷や、脳脊髄の癒着を起こすような病気でも起こることがわかっています。いずれも、脳と脊髄を循環している脳脊髄液と呼ばれる液体の流れが滞ることにより空洞ができると考えられています。脊髄は脳の命令を全身に伝える神経線維の束ですから、この部分に空洞ができると感覚障害や運動麻痺が現れてきます。発症年齢は30歳代が最も多くなっています。

■症状

脊髄空洞症では、まず片手の痛みや温度に対する感覚が鈍くなり、やがて両手の力が入らなくなります。症状の進行はゆっくりですが、治療せずに放置した場合、約半数の人は20年以内に下肢にも麻痺が及び、車椅子が必要になるといわれています。

■診断・検査

頚椎をMRI検査することにより、ほぼ診断を確定することができます。
ただし、「脊髄腫瘍」の合併症として発生した脊髄空洞症については、造影剤を用いたMRI検査が必要となります。

■手術・治療

現在のところ治療法は手術しかありません。手術法は空洞が発生している原因に合わせて選択しますが、手術の目標は空洞を縮小させることです。
手術方法としては、主に次の2種類があります。

<空洞短絡術>

脊髄空洞内に直接細いチューブ(カテーテル)を挿入し、空洞内にたまった水を他の場所に流すようにする手術です。「空洞−くも膜下腔シャント(SS shunt)」(空洞の水をカテーテルを通じてくも膜下腔に流す)が一般に行われています。空洞から、腹腔部、胸腔部に流す処置を取る場合もあります。
この手術は、比較的簡単で有効です。しかし、人工のチューブを用いるため,チューブがつまったり抜け落ちたりする危険性があります。また、そもそも原因となっている疾患(キアリ奇形など)の治療が行われないという欠点があります。

<大後頭孔拡大術>

頭蓋から脊柱管に移行する部分を大後頭孔と呼びますが、この空間を拡げることによって、髄液の流れを良くするものです。これは、本来頭蓋内に収まっているはずの小脳の一部が大後頭孔を経て脊柱管内に下垂している「キアリー奇形」により、脳脊髄液の交通が妨げられ空洞が形成されている場合に有効な手術です。多くの場合、術後1ヶ月ほどで空洞を縮小させることができ、症状も改善します。


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